あなたの文章はわかりにくい、と言われたことはないですか。
文章を発信しても、なかなか読まれないということはありませんか。
そんな悩みを解決するために『ていねいな文章大全』を紹介します。
難しい日本語を紐解き、正確でわかりやすく、配慮ある工夫を凝らした文章の書き方を教えてくれます。
本を読む時間がないという方は、耳で読書してみてはどうでしょうか。
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内容の紹介と感想
総ページ520超えのいわゆる鈍器本。
鈍器本の代名詞『独学大全』といい勝負ですね。(『独学大全』は788ページでした…)
本書は、最後まで読んでもらえる文章を目指し、108つのテーマに分けて徹底的にトレーニングする本です。
最後まで読んでもらえることを目指した、520ページ超えの本。
なんとか最後まで読みました。笑
読み終えて思いましたが、さすが文章術の本でした。
読みやすくて520ページ超えも苦にならず、すらすら読むことができました。
最後まで読んでもらえない文章とは、どのような文章か。
本書では以下の4つと定義しています。
- 不正確な文章
- わかりにくい文章
- 不快な文章
- 退屈な文章
この4つを解消すれば、最後まで読んでもらえる文章となります。
文章の対象は絞っておらず、論文やレポート、ビジネス文書やメール、Web記事やエッセイ、SNSなど、どの文章にも当てはめることができます。
正確な文章
最初に、不正確な文章を、正確な文章にする方法を紹介しています。
この章は、ほぼ国語の授業に近いですね。
日本語としての表現方法、カタカナや外来語の表現方法、よくある変換ミス、カッコや記号の使い方などなど…
日本語って奥深いと改めて考えさせられます。
この章で特に印象的だったのが、「主語」について。
学生時代や、社会人になってからも「この文章には主語がないから伝わらない」と言われたことはないでしょうか。
きっと誰しも記憶にありますよね。
しかし、「文に主語がない」というのは日本語としては珍しくないのです。
日本語は、主語が省略できて、主語がなくても成り立つ言語なんです。
よくよく考えてみると、たしかにその通りで、昔は理不尽な怒られ方したんだなー、と思いました。 が、やはり主語がなくてわかりずらくなっていたり、主語と述語の対応関係がおかしくなっていると正しく伝わらない、ということがあることがわかります。
本書の例を挙げると、以下が 主語が復元できない例。
Before:新宿・箱根湯本間を往復する小田急ロマンスカーです。
↓
After:小田急ロマンスカーは、新宿・箱根湯本間を往復しています
以下は、主語と述語の対応関係がおかしい文。
Before:小田急ロマンスカーは、新宿・箱根湯本間を往復する特急列車が小田急ロマンスカーです。
↓
After:小田急ロマンスカーは、新宿・箱根湯本間を往復する特急列車です。
わかりやすい文章
次に、わかりにくい文章を、わかりやすい文章にする方法の紹介です。
この章は、国語の授業では習っているようで習っていない方法で、なるほどなと思える方法ばかりです。
漢字とひらがなの使い分けや、カタカナの使い方、句読点のつけ方、外来語・略語の使い方、などなど。
この章で、特に印象的だったのが「文は短くなくていい」です。
世にあふれる文章術の本や、Webライティング手法の本には文は短くするほうがよいと書かれていることが多いと思います。
しかし本書では、必ずしも短いほうがよいとは限らず、適度な長さであることが大事と言っています。
長くても読みやすい文とするためには、文を先頭から読んだときに予測が効きやすい構成なっていることです。
また、短い文と長い文を適度に織り交ぜて、緩急をつけた方が読みやすい文章となるようです。
配慮のある文章
次は、不快な文章を、配慮のある文章にする方法の紹介です。
これまでの章で紹介された正確な文やわかり文が、人を不快にさせることもあります。
この相反する考え方の落としどころがどこなのか?を教えてくれています。
この章では、国語の授業で習った尊敬語・謙譲語の使い方も学べます。
正しい使い方を認識したうえで、過剰な敬語は距離を遠ざけてしまうので注意が必要です。
その他にも、メールのやり取りはどうしても無機質になりがちで感情が伝わりづらく、相手を不快にしてしまうこともあります。
そのような場合のうまい表現の仕方を紹介してくれていて、ビジネスシーンで役立つことでしょう。
工夫を凝らした文章
最後は退屈な文章を工夫を凝らした文章に対して、読み手を飽きさせない工夫が紹介されています。
前章もそうでしたが、正確でわかりやすい文章は、退屈な文章となってしまうこともあります。
正確でわかりやすい文章は、どのようなものなのかを認識したうえで、時にはルールを逸脱し表現することで深みが出てくることもあります。
この章で、面白かったのが「カメラワーク」。
エッセイや物語の表現で使用される手法かと思いますが、視点をどこに置くかで表現が変わるという方法です。
「~する。」と「~した。」を混ぜることで、頭の中で想像する映像がズームアウトしたりズームインしたりします。
また、1人称視点と三人称視点も使い分けることで、「私」が見ている景色と、「私」ではない第三者が見ている景色が使い分けられます。
文章を読んでいると、無意識のうちに現在や過去の視点や、「私」やそれ以外の視点を想像しているんだな、と認識できました。
その考え方が、論理的に説明されていて、ものによってはそれをテクニックとして使っているんだな、と感心させられます。
まとめ
本書は、まず国語の授業を受けているような、日本語の基本や使い方の解説されていてとても勉強になります。
正確でわかりやすい文章を学んだうえで、それと相反する不快にさせない考慮された文章の書き方も解説されていて、文章の深い部分も学ぶことができます。
「守破離」の考え方如く、ルールを認識したうえでときにはルールを破った表現方法もありですよ、と教えてくれます。
日本語、深いです。
最後には、いわゆる生成AIによって作成された文章の使い方も紹介されていて、今の時代にも切り込んでいます。
著者は、今後もテキスト生成AIは進化するものの、人間のテキスト生成能力には及ばない、と結論付けています。
今後どうなるか楽しみなような、恐ろしいような。
本書の目次
本書の目次は以下の通り。
PartごとにSectionが設けられており、全108Sectionがあります。
- Part 1:正確な文章
- Part 2:わかりやすい文章
- Part 3:配慮のある文章
- Part 4:工夫を凝らした文章
著者の紹介
著者の石黒圭さんは、現在、国立国語研究所教授(日本語教育研究領域代表)、一橋大学大学院連携教授です。
専門は日本語学(文章論・談話分析)、日本語教育学(読解研究・作文研究)。
日本語に関わることはすべてやりたいと考え、語彙、表現、読解、作文、対話、独話など、コミュニケーション全般に関心を広げているらしいです。
本書を読んでいて、日本語の知識に長けていて、こだわりを持っているということが手に取るようにわかります。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。
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