【書評】自分の頭で考える読書 荒木博行著

ビジネス本

巷にはいわゆる「読書術」の本がたくさんありますが、「読書法」に正解はあるのでしょうか。
答えはNOです。

読書法はひとそれぞれでOK。
「本とどう付き合っていくのか?」ということにフォーカスをあてて、その方法を紹介している本です。
タイトルの通り、「自分の頭で考える」ことがポイントです。
本の内容を無批判で受け入れてしまうような「他人の頭で考える」ような読書になってはいけない、という主張です。

新たな感覚の「本との向き合い方」に出会えるのではないでしょうか。

この本はこんな方におすすめ!
  • 読書によって学びを増やしたい人
  • 新しい読書の方法を求めている人
  • 本をもっと読みたい人
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内容の紹介と感想

私たちは終身学習刑を宣告されているのです。

本書の序盤で出てくる一文で、とても印象的でした。
一昔前と異なり、変化の多い現代では学生を卒業したあとも学び続ける必要があります。
このことを、作家のカリエール氏が表現したようです。

この表現に対して著者は、どうせ学び続けなければいけないのであれば、楽しく学び続けたいですよね。
と主張し、「終身学習刑」ではなく「終身エンタメチャレンジ」として楽しく学び続けましょうと主張しています。

その手段として、本を使って楽しく学び続ける方法を紹介しています。

今の時代、なぜ本なのか
多くの読書術本で語りつくされている問いです。
この答えも、楽しく学び続けることがポイントでないのか、と思いました。

インターネットが発達した現代では、情報はあふれかえっており、本以外にも知りたいことに対する答えを取得する手段はたくさんありますね。
それでもなぜ本を読むと良いのでしょうか。


本書が語る本の魅力は、「魅力的でないこと」。
ん?
と思いますよね。

ここでの「魅力的」は、短時間で効率的に情報が吸収できることです。
インターネットによって、動画、音声などにより多くの情報を得ることができるようになりました。
ただし、情報が多すぎて自分で考えるという行為が疎かになってしまいます。

一方、本には文字と図表くらいで、比較的情報が少ないです。
その分、自分の考えを投入する余地が多いところ、つまり「余白」があるところ。
これが本の魅力と語っています。

この「余白」に自分の考えを投入することにより、想像力や世界観が広がり楽しく学ぶことができる。
これが、この時代に本を手に取る理由なのかな、と思いました。

本書の魅力として、一つ付け加えておきたいことがあります。
要所にちりばめられたかわいいイラスト。
このイラスト、著者の荒木さんが書かれたものだそうです。

本の選び方「問い」と「答え」

本書では、本と向き合うために、本の選び方が紹介されています。
著者は、どの本にも「問い」と「答え」があると言っています。
ビジネス書にも小説にでもです。

この「問い」と「答え」が自分にとって新たなものかどうかで、分類することができます。
以下の図のようなイメージです。

この分類された3つジャンルをカテゴリーよく読むことが大事です。

  • ①問いの発見
    自身が今まで考えたことのない「問い」を提供する本。
    問題とも感じていないような「問い」が新たに発見されるという状況のこと。
    こうゆう本は、人生を変えるようなインパクトがある反面、自身を否定するようなことにつながる可能性があるためストレスや負荷がかかります。
  • ②答えの発見
    「既存の問い」に対して「新しい答え」を与えてくれる本。
    認識している「問い」に対して、自分が持っている「答え」ではない新たな「答え」を提示してくれる。
    もしくは、「問い」はあるが、「答え」がない状態から「答え」を提示してくれるような状況でしょう。
    「問い」続けた期間が長いほど、大きなインパクトを与えてくれます。
  • ③既知のリマインド
    「既存の問い」に対して「既存の答え」を提示する本。
    分かっていても、忘れてしまったり、実践できていないことのリマインドになります。
    定期的にリマインドし忘れないようにすることも大事です。

前述の通り、この3つのカテゴリーをバランスよく読むことが大事です。
私自身を振り返った時、③既知のリマインドのカテゴリーに分類される本が多いな、と思いました。
一般的にもその傾向は多いようです。

自分自身で課題認識を持っていて、その答えも知っている。
同じカテゴリーの本を読んだとき、読みやすいでしょうし、「やっぱりそうだ」と答え合わせをするような読書となり、ストレスが少ないのでしょう。

ただし、このような本をたくさん読んでも成長していない可能性があります。
このことには危機感を感じないといけないですね。

この考え方から、選書するときに「問いの発見」や「答えの発見」が得られるような本を意識的に選ぶ必要があると感じます。

抽象化と具体化

本書で、本から学びを得るために重要とされていることで、「抽象化」というキーワードがたくさん出てきます。

「抽象化」というのは、具体的で固有な事象を一般化・普遍的な概念に変換することです。

例えば、サッカーは「球技」に抽象化でき、球技は「スポーツ」に抽象化でき、スポーツは「体を動かすこと」に抽象化できる、というイメージです。

本に書かれていることは、著者が体験したことや、発見した方法論などが紹介されています。
それは具体的なことで、著者のジャンルで成功したことであるかもしれません。
しかし、それを抽象化することで、読者自身に還元することができる可能性につながります。

またそのためには、「問い」を抽象化しておくことも大事です。
「問い」を抽象化することで、多くの本が自分自身に刺さる内容となります。
本には具体的な内容が記載されていると思いますので、抽象化された「問い」に対する「答え」が発見できることがあります。

また、抽象化された「問い」を具体化する、というやり方も紹介されています。
具体的にはどうゆうことか、たとえばどうゆうことか、を考えるということです。
こうした抽象化と具体化を行き来することで、知識が広がり、その手助けをしてくれるのが本なんですね。

読書の病

本書は、読書のやり方は人それぞれと言っており「必殺読書法」というものは存在しないと言っています。
それなのに、著者のもとには読書法の相談があり、相談者の多くは「読書の病」かかっているそうです。
その「読書の病」紹介します。

  • 完読の病
  • コミットメントの病
  • 積読の病
  • 実践の病
  • 読書時間不足の病

読書法の本では、紹介されている一般論もあるかと思います。
全部読まなくてもいい、1冊だけ読まなくてもいい、積読は悪くない、などなど。
これらはいわゆる既知のリマインドですね。

1つだけ、「実践の病」はいろいろな「答え」があるように思えました。
一般的には、本は実践しないと意味がない、アウトプット前提で本を読むべき。
などと書かれている本は多いですね。
本書も、同様のやり方を推奨しています。(アムロ式読書法、詳しくは本書にて)

しかし、すべての本が即実践に移せるわけでもなく、何年後かにようやくわかったり、何かの経験を経て理解できたりすることもあります。
すぐに実践に移せないので、自分はダメだ!と短絡的に思わない方がよさそうです。

これに通ずるものとして、本書で紹介されている「スノードーム理論」という考え方が面白いです。
『本をよむ人だけが手にするもの』(藤原 和博著)で紹介されている、知識の表現「沈殿」「かき混ぜ」「浮き上がり」をスノードームに例えたものです。

スノードームとは、お土産などでよくある雪景色置物で、普段は雪が沈殿していますが、器をシェイクすると雪の粒が舞い上がるインテリアのことです。

これを知識に例えたもので、本などで得た知識は頭の中で沈殿しています。
しかし、時が経ったり、新たな経験をしたりすることで、頭の中に刺激が与えられることにより、沈殿した知識が舞い上がるのです。

とても面白い考え方ですよね。
本を読んでいても、実践に移せていなかったり、しっかり理解できなかった場合でも、脳内スノードームの沈殿物が増えた、と思えれば少し気が楽になります。
そして、いつか舞い上がる時が来るかもしれません。

まとめ

本書は、読書との向き合い方を教えてくれる本ですが、最後にこの言葉を残しています。

本は読んでも、読まれるな。

どこかで聞いたことのあるフレーズですが…

経済学者の内田義彦氏が語っていた言葉のようです、どうゆう意味なのでしょうか。
著者は、「熱狂と懐疑のバランス」にその答えがあると言っています。

この「懐疑」が重要で、その本に対する違和感や不安感、疑問を感じている状態のことです。
本を読んで、これじゃダメな気がしますが、この状態が本書のタイトルである「自分の頭で考える読書」なのかと。

「本に読まれない」ためには、適度は「懐疑」をもって読み、「問い」を育てていくということでしょうか。
私はそのように理解し、今後も「本に読まれない」よう読書を続けていきたいと思います。

本書の目次

  • 序章:変化の時代、「終身エンタメチャレンジ」の扉を開けよう
  • 第1章:なぜ今、本なのか?
  • 第2章:どんな本を選ぶのか?
  • 第3章:本を通して「問い」を育てる
  • 第4章:「読書の病」を治療しよう
  • 第5章:「読書が役に立つ」とは、どういうことか?
  • 第6章:「本を読む」とは、自らをいきるということ
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著者の紹介

荒川博之さんは、株式会社学びデザイン代表取締役。
読書要約サービス「フライヤー」にアドバイザー関わっていたり、Voicyで本を紹介する番組(荒木博行のbook cafe)を毎日配信されています。

見るだけでわかる!ビジネス書図鑑』『藁を手に旅に出よう』など、他著書も多数。

以上、最後までお読みいただきありがとうございました。

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